8016 博士総合演習D(a) |
金 5時限 1単位 沼野 雄司 教授 |
調布 |
博士 1年~ |
授業の概要
本演習は、修士課程と博士課程の学生を対象にして、20世紀の「音楽」と「社会」の関係について、クロニクルな認識を土台にした多面的な考察を加えるものである。目的は以下の3点に集約される。
(1)20世紀のレパートリーに対する視野を拡げること
学部教育でレパートリーの中心になっているのはバッハからドビュッシーあたりまでの200年ほどの音楽だが、しかし既に世界が20世紀に突入してから120年近くが経過している。21世紀の音楽家にとって、これらの作品をレパートリーに取り入れることは必須である(タケミツ一曲をプログラムに組み込んでこと足れりとする時代はすでに過ぎ去った)。本演習はそのための土台を提供する。
(2)音楽の土壌となっている「社会」に対する基本的な知識を習得すること
例えばベートーヴェンの創作の軌跡はフランス革命、あるいはその後のナポレオン戦争の展開と直接的に関わっているが、こうした意識がない学生があまりに多い。また、カトリックとプロテスタントの差異も知らずに「宗教音楽」を演奏する学生も少なくない。今後、プロの音楽家として活動する場合、あるいはヨーロッパで学習を続けることになった場合、こうした無知は致命的なものともなり得る。本演習はそのための基礎を鍛錬する場でもある。
(3)知的で成熟した音楽家としての基礎を養うこと
大学院という場所は、各人がそれぞれの立場からの知識を交換し、議論を重ねるための「言語」を習得する場でもある。ヨーロッパの音楽家と比した時、日本の音楽家はこの「言語」がきわめて貧しい印象がある。本演習では参加者全員に強い知的負荷をかけるとともに、明快なプレゼンテーションと積極的なディスカッションを課すことによって、次代を担う音楽人を育成することを試みる。
本演習は、教員(沼野)自身が大学院時代に参加していた様々な演習、他の大学院で行ってきた演習、そしてアメリカで体験した大学院演習の経験を踏まえて実施される。当然ながら、この中で学生は日本語にとどまらない様々な文献を読み、自分の頭で論理を組み立て、積極的に議論を交わし、時には教員にも反論しなければならない(教員といえども大学院の演習の中では、院生と同じ一参加者にすぎない)。その厳しさは学部の講義の比ではないが、しかし結果として得るものも、とうてい学部の比ではないことは保証する。興味がある学生は、まずは最初のイントロダクションをのぞいてみてほしい。
前期の総合演習D(a)では、1890年以降の社会と音楽創作の関係について、多面的に考察を加える。一般的に、音楽史には時代によって扱い方に濃淡がある。20世紀前半でいえば、1920年代については多く論じられているものの、1930年代についての記述がきわめて少ないといった具合である。本演習では、あえて均等に年代を区切り、クロニクルに事象を追いながら、これまでの音楽史が見落としてきた様々な論点を拾い上げ、再検討するという手順を踏む。実際、このD(a)で扱う時代においては「ドイツにおける後期ロマン派的な半音階書法・フランスの旋法書法の発展が無調を産みだし、さらにはその反動として新古典主義があらわれる・・・」という大きなストーリーが存在するが、こうした直線的な歴史観では1930年代独特のねじれは見えてこないし、旧東欧、アジアを含む「周縁国」にも視野が及ばない。本演習では発表と議論を重ねる中で、大学院修了にふさわしい知的能力およびプレゼンテーション能力を滋養する。
到達目標
20~21世紀の音楽について確固たる自分のパースペクティヴを持ち、意見を述べられるようになること
履修資格/履修に必要な予備知識や技能
予備知識は特に必要ないが、積極的に発言する姿勢が求められる。
授業の形式
演習形式
成績評価の要点
試験 | 小テスト等 | レポート | 発表・作品 | 出席率 | 授業への取組 |
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○ | ○ |
授業展開と内容-前期
内容 | |
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第1回 | イントロダクション:方法・手順・グラウンドルールなど |
第2回 | 1890年代の音楽と社会(1)後期ロマン派以後の状況:ドイツ・オーストリア、その他 |
第3回 | 1890年代の音楽と社会(2)普仏戦争以降のフランス音楽:フランス |
第4回 | 1900年代の音楽と社会(1)「世紀末」概念の再検討:ドイツ・オーストリア、その他 |
第5回 | 1900年代の音楽と社会(2)「血の日曜日」とフランスの位置 |
第6回 | 1910年代の音楽と社会(1)第一次大戦と音楽 |
第7回 | 1910年代の音楽と社会(2)ロシア革命とアヴァンギャルド |
第8回 | 1920年代の音楽と社会(1)無調と12音技法 |
第9回 | 1920年代の音楽と社会(2)新古典主義の背景 |
第10回 | 1930年代の音楽と社会(1)両大戦間のドイツ・オーストリア音楽 |
第11回 | 1930年代の音楽と社会(2)両大戦間のフランス・アメリカ音楽 |
第12回 | 1940年代の音楽と社会(1)第二次大戦の諸相 |
第13回 | 1940年代の音楽と社会(2)第二次大戦と日本
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第14回 | まとめ1 |
第15回 | まとめ2 |
事前・事後学習-前期
授業展開と内容-後期
内容 | |
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第1回 | |
第2回 | |
第3回 | |
第4回 | |
第5回 | |
第6回 | |
第7回 | |
第8回 | |
第9回 | |
第10回 | |
第11回 | |
第12回 | |
第13回 | |
第14回 | |
第15回 |
事前・事後学習-後期
授業時間以外で、この授業内容等について質問がある場合
水曜日12時~14時ほか。ただしメール(numano@tohomusic.ac.jp)などでアポイントをとることが望ましい。
調布2号館(図書館)1階、研究室1
テキスト
書籍名 | 著者名 | 発行年 | 価格 | ISBN | 備考 | |
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